Main

February 04, 2010

TOYOTAバッシングの陰に感じた不安

 トヨタのブレーキ不具合問題が連日のニュースをにぎわしている。アメリカでは、特にその報道は顕著だ。運輸長官が「トヨタ車には乗るな!」発言をしてしまったり、当然ラジオ(実はほとんどTVを見ないので)のNEWSでもその不具合の数々、そして新たに発覚してしまった問題などを、まるで鬼の首でも取ったかのように説明している。どうもこのような報道をきいていると、かなり昔にココム規定に違反した東芝を、同じようにバッシングし、国会議員(だったと思う)が、TVで、東芝製品を金槌でたたき壊していたシーンを思い出させる。確かに昨年はアメリカの自動車産業にとっては、GMとクライスラーの倒産という歴史に残る年だった。そんな中、同じように景気低迷で販売台数が激減した中でも、エコカーの販売に力を入れ確実に努力してきた(であろう)TOYOTAに対する、言い方は悪いが「腹いせ」にも通じるものが見え隠れしているような気がしてならない。
 さて、TOYOTAのリコール問題だが、確か事の発端は、去年の秋ごろ「フロントマットがアクセルに引っかかってアクセルが戻らなくなってしまう」というものだったと記憶している。それがここへきてアクセルの機構自身の問題になり、昨日あたりから、「アクセルを制御するシステムのソフトバグの問題」という話も出てきている。実は、この話、私は昨年訪問した車載オーディオ機器メーカー大手A社のエンジニアから既に聞いていた。彼は「アクセルが戻らないというのは分かるが、発車時からアクセルを全開に踏み込む人なんかいない。引っかかるというのはアクセルを全開に踏み込んだときにおこる(と言われていたと思う)らしいがそんなに全開に踏み込む人がいるのか?これはきっと、このシステムを制御しているソフトのバグに違いない」といっていた。「ソフトのバグはまず発見するのにかなり時間がかかり、単純に治せるものではない」と指摘したうえで、まず簡単に問題を安価で対策できるものに置き換えている可能性があるというのだ。その時は単純に「う~ん、そういうこともあるのか」と思って聞いていたのだが、ここへきてその話がまだ明確ではないにせよ現実なものとなったということに正直なところ、かなり不安を感じだ。今でさえ自動車の電化率はかなりのパーセンテージを占めており、ハイブリッドや電気自動車になればそのほとんどが電化されるわけだ。当然それらの制御は全てセンサーやマイコンをはじめとした電子部品(既にマイコンの搭載数は相当数に上っているらしい)によってコントロールされる。そしてこれらを機能させるソフトウェアは、恐ろしく重要なものになるわけだ。WINDOWSのようにあれだけのシェアを持つソフトウェアでさえ、いまだに多くのバグを抱えている。確かに机上の使い勝手という領域だし致命的なバグでも命にかかわることはない。しかし車となると話は別だ。ちょっとした些細なバグでも、それは大問題になる危険性を十分はらんでいる。ひとつだけ入力を間違えても、これが立派なバグとして、何十億円もの損失と、尊い人命を奪う結果にもなりかねないのだ。そう考えると、車載電装品に使用されるソフトウェアを開発するエンジニアにはかなりのスキルと技術力、そして注意力が要求されるだろう。ただ、この先も急激に進む車の電装化に、その人材の供給が間に合うのだろうか?前出のエンジニアが、ぼそっと話していた「今後、車載のデータ制御も通信を利用したシステムにどんどんなっていく。そこにはバグだけでなく、ウィルスも容易に侵入できる可能性もある。それらをどうやってプロテクトし、そして改善していくのか、そう考えると非常に厄介な問題がたくさんでてきそうです。」と。う~ん、確かに。。。。
 TOYOTAバッシングの陰に実はソフトウェアのバグによる問題という将来の不安の種が見え隠れしている事を意識している人は果してどのくらいいるのだろうか?

June 23, 2009

韓国勢の脅威は侮れない

先週はメキシコへ出張。俗にテレビジョンバレーといわれる国境の町ティファナ地区は、最盛期には年間2000万台のTVを南北アメリカに供給する一大TV生産拠点だ。しかしながら昨年から続く不況のあおりを受けて、生産数は激減、工場の閉鎖や生産規模の縮小をほとんどの会社が余儀なくされている。そんな中で唯一日系TVメーカーで奮闘しているのがP社とM社だが、シェアでは圧倒的に日本勢に水をあけ(水をあけられているなんてもんではないかもしれない開きがあります)、世界シェアでトップを走るのが韓国のSAMSUNGだ。驚異的な生産量を誇り、コストでも圧倒的に市場をリードする。アメリカではかつて市場を風靡していたSONYやPANASONICといったブランドも残念ながら影は薄い。どうしてそこまで大きく差を付けられてしまったのだろう?もちろん強力な資金の後ろ盾があることは否めないが、それ以上に市場を解析するマーケティング、そしてあくまで自分の考えではあるが、今まではコスト面における優位性が、日本のマネをすることで開発費を軽減して一気に量産工程で製品の作り込むといった手段で確立されていたと思われるが、最近では、このあたりの状況もずいぶんと変わってきているようだ。
 20年以上前になるが、私は一時SAMSUNG(当時は三星電子)の生産技術研究所に出向していたことがある。当時勤めていた日本の小さな検査機メーカーへ、その頃、韓国の雄であった三星電子よりノックダウン生産の話がもちこまれ、もちろん「どうせ商品のまねをするのだろう」と分かっていながら、当時は技術的には不可能と思われていたROMのプログラム解析はできないだろうから最終的にはROMとロイヤリティを高額で買ってもらえればよい、的な考えで話がすすめられ、私がその担当として(若かったんだけど)、最初に購入してもらった20セットの測定ユニットと共に現地に赴きハードウェア生産の進め方や、具体的には製品の販売に関するサポート(同社はロイヤリティを払い、中近東を中心に販売したい計画があった)などの打合せをした。最初に三星の生産技術研究所に足を踏み入れたとき、その広いフロアーに所狭しと日本の製造機器が並べられ、その機器ごとに担当グループが分かれてエンジニアがアリが群がる如く必死になって機械の分解作業にいそしんでいる光景を目の当たりにして足がすくんだことを思い出す。ターゲットはうちだけでなく、日本の優れた製造技術に立脚して開発された製造機器全てだったのだ。もちろん好意的に協力を申し出たのはきっとうちぐらいで、他の設備は同社が購入したものだろう。そして、私の会社の担当についたのは、名門ソウル大学を首席で卒業し特待生として国から兵役をも免除された(兵役のある韓国だが、当時から国力の後退を懸念し、優秀な人材には3年間の兵役を免除するシステムがあった)若いエンジニアだった。たしか2か月近くの訪問だったと思うが、いとも簡単にすべてのものをコピーしてしまった彼らと、今後は基板のROMとロイヤリティを購入してもらう契約を交わし帰国したのだが、それっきり三星からの注文は来なかった。彼らは完全にROMのコピーまでしてしまったようだ。
 その後私はアメリカにわたり、いつ頃だったか忘れてしまったが、三星のTV工場がティファナに新設され、そこに営業に行った際、設置された生産ラインに一台づつ私が販売してるものと全く同じ検査機が並んでいるのを発見。まさしく私が持ち込み、コピーされた検査機だった。聞けばTV事業部だけで1,000台ぐらいはあるという。その貪欲さには思わず脱帽せざるを得なかったのだが、そのような経験から、実際の製品に関しても同じように日本商品のコピーが主な開発手法であると思っていたことがあり、こちらでは一般的に普及しているSAMSUNGやLGの携帯電話もどう見ても2~3世代前の日本のそれで、おまけに使いにくいところまでしっかりコピーされてたものだったのだが、最近は、特にI-phoneタイプのそれはデザインも斬新でなかなか見た目にも美しいものが多くなってきた(でも自分はそんなトラウマがあるので買わないけど...)、そして先週の出張で、たまたま訪問した液晶の大手であるS社で聞いた話によると、同社でなぜSAMSUNGがあんなに安くTVが作れるのかを検証するために、同社のTVを分解したところ、そこには精錬された生産技術力により、見事にコストダウンがされた筐体と心臓部(PCB)が現れたそうだ。PCBのサイズはS社の半分(PCBが小さければ搭載部品数もモジュール化されて少なく製造コストが安い)、ハーネス類が殆ど削除され一体化した内部構成。そして金属をほとんど使用せずに強度を保つ筐体設計など、明らかにS社の上を行く技術力だったという。開発と製造が一体化した組織構成とそれを無駄なく生産する生産技術が企業独自のものとして功を奏し、品質的に日本製品と引けを取らず、かつ圧倒的にコスト競争力をもつTVの生産を完成させているのだ。
 非常に失礼だったか今まで認識していたモノマネ文化の考えをすべて改めなければならない時が既に来ていた。そして、この脅威に今まで技術立国として優位性を保ってきた日本企業は、これからどのように対処していくのか?いや既にずいぶんシェアでは水をあけられているから追従という表現が適切かもしれないが、この先の動向は本当に気になってしまう。

November 09, 2007

製造プロセスのニッチを探せ!

先日客先であるM社のプロセス担当のNさんとMさんと歓談。現状の製造プロセスのお話などをうかがう。最近は同じTVを生産するにしてもブラウン管時代の片鱗もないほど、その内容は様変わりしている。今までのアナログからデジタルへの移行により、生産設備の精度向上や、人が介在する工程が減ったために、ある意味でプロセスにおける不良は激減したという。ただポカミスやオペレーションの不備に伴う些細な問題が、品質に大きな影響を与えるようになった。というのも生産される商品の単価が上がったからだ。このような本当に些細なミスや問題点の解明と解決が歩留まりの向上に不可欠となる。ただそれは本当に小さなことで、それを探し出して対策するということはなかなか骨の折れる作業だという。たとえば今まで恒久的に発生していた部品の挿入ミスなどの不良が最近では実装機の精度向上や機能アップにより、ほとんど見られなくなったが、突発的な同じ不良は継続して発生するらしい。その不良を解決するためには、まずいくつもの要因が重なり複雑怪奇になった原因の究明に多くの時間を費やさなければならないらしい。
話をうかがいながら考えた事は、私の立場から言えば、そこにニッチが存在する。同じ製品を生産していれば同業他社も同じ問題に頭を抱える場合がほとんどだと思うが、その問題を解決できるツールや資材を発掘もしくは開発していけば、需要は見込めるということだ。もちろん自分が無知ではいけないしプロセスを理解していかなければならない。ただ、そんなところにもう少しフォーカスしていけば、まだまだチャンスはある気がした。些細なことでもアテンションして商材開拓にうまくつなげていきたい。